杉樽ヒストリー・・・②
こんにちは。いつもありがとうございます。
うす暗い蔵の奥の奥にある杉樽の諸味は、いくつかの樽を除いてカチカチの状態。
田んぼのヒビ割れを想像してもらうとまさにあんな感じです。
諸味はお醤油の元で、本来はチョコレートを溶かして半液状にゆるくしたような形状です。
望ましいのは、全てがよく混ざりあいネットリ感がなく、サラリとした手ざわりです。
もうこれは液体ではなく個体だ!
なぜここまでカチカチに!!

それは置くとして
こんなに固くては諸味をしぼる圧搾機へと流すこともできない。
仕事はまずこれを溶かすことから始まりました。
所定の濃度の塩水を大量に作り
塩水のタンクから奥の杉樽へ太く長い長いホースをひっぱって
杉樽とタンクにいる私と従業員が
「入れてー いいよー」
「ハーイ」
ケータイもない時代。(一応平成なのですが)
蔵の中で大声をかけ合って塩水を注入。

塩水は固い諸味の表面に漂ったままなので櫂棒でつついて入れ込んで緩くします。
それを撹拌するのを繰り返し流せる柔さまでもっていきます。
その間に杉樽に発生した白い産膜酵母を少しずつ少しずつ除去して杉樽自体をきれいにしていきます。
来る日も来る日も2m以上の櫂棒で固い地面をついていき、産膜酵母をとる。
体はくたくたで延々と続く作業に「他所はプラスチックやホーローのタンクで綺麗なのに楽なのに」と古い杉樽ばかりの蔵をうらめしく思う気持ちでいっぱいでした。
杉樽の中を洗浄する作業も杉樽ならではのものでした。
小さい梯子段で中に下り、タワシで杉樽を傷つけないよう丁寧に洗います。
「プラスチックだったら高圧洗浄でアッという間なのに」
とここでも杉樽をうらみました。
「情けない。恥ずかしい。苦しい。こんな毎日から一日でも早く抜け出したい。」
と思わない日はありませんでした。
しかし!!
そうやって圧搾機まで流し、圧をかけて搾ったお醤油の原液は殆ど素人の私が舐めてみてもコクがあってとてもおいしかったのです!
そして辛い作業の数々が後でみんな私のためになりました。
つづく